
キャリアパスとは、企業内における昇進の道筋を指す言葉です。
例えば、契約社員として入社してから正社員→リーダー→主任→課長……というように出世していくルートと、その条件(年齢や必要なスキル・経験など)を示したものをキャリアパスと呼びます。
キャリアパスは主に企業が従業員に対して提示するもので、人事制度としての意味合いを色濃く持っています。
企業でキャリアアップを目指すなら、必ず知っておくべきキャリアパスですが、多くの人はその意味をしっかりと理解していません。
そのせいで自分が望むような出世ができず、損してしまうのが現状です。
そこでこの記事では、昇進を目指すなら押さえておくべき「キャリアパス」について、詳しく解説します。
この記事のポイント
- キャリアパスの基礎知識が身に付く
- キャリアパスのメリット・デメリットが理解できる
- 自分に合うキャリアパスの判断方法や注意点まで解説
この解説を最後までお読みいただければ、あなたは「キャリパスの基本」はもちろん、企業サイドがどういった意図でキャリアパス制度を導入しているのか?など、“キャリアパスの仕組み”が理解できるようなります。
結果、キャリアパスを自分の仕事人生に活用して、理想通りのキャリア構築ができるようになるはずです。
ではさっそくキャリアパスの解説を始めましょう。
1. キャリアパスとは

まずはキャリアパスの基礎知識から見ていきましょう。
1-1. キャリアパスとは企業内における昇進の道筋のこと
キャリアパスとは、簡単にいえば企業内における昇進の道筋のことです。
会社に入社してから、最終的に目指す役職やポジションにたどり着くまでの中長期的な計画をキャリアパスと呼びます。
「キャリアパス=社内で出世していくルート」と言い換えても良いでしょう。
▼ キャリアパスの例

出典:厚生労働省
一般社員→リーダー→主任→課長……と、入社してからどのように昇格していくか、ステップが示されています。このような出世していく道筋のことを、キャリアパスと呼びます。
1-2. キャリアパスは「人事制度」の意味合いが強い
キャリアパスは主に企業が設定して、従業員に提示するものです。企業の人事制度の意味合いが強く「キャリアパス制度」とも呼ばれます。
▼ キャリアパス制度の事例

キャリアパス制度では、各ステップで求められる役割やスキルが明確に定められます。さらに、昇格の基準も明確化されています。
▼ 昇格の基準の例
- 勤続年数
- 資格
- 研修受講歴
- 実務経験
- 評価結果
- 昇格資格
「現在のステップで何をすべきか」がわかると同時に、「次のステップに昇格するためには何を学ぶべきか」も見える状態になっているのがキャリアパス制度の特徴です。
1-3. キャリアデザイン・キャリアプラン・キャリアビジョンとの違い
キャリアパスには、ほかにも似た言葉があります。ここで意味の違いを整理しておきましょう。
▼ キャリア関連の類義語
| キャリアパス | 企業内における昇進の道筋・ルート(企業が従業員に提示することが多い) |
| キャリアプラン | 仕事をしていくうえで将来の理想像を実現するための行動計画 |
| キャリアビジョン | 仕事をしていくうえでの将来の理想像 |
| キャリアデザイン | 自分のキャリアの積み方を設計・構想すること |
補足として、広義では「キャリアプラン」を指して「キャリアパス」と呼んでいるケースも見受けられますが、以下のとおり区別するのが一般的です。
- キャリアパスは、企業内での出世ルートを示す企業内の人事制度のことを指す。企業が設定して従業員に提示するケースが多い
- キャリアプランは、ひとつの企業内の昇進・昇格にとどまらず転職なども含めた個人の行動計画を指す。個人が設定して自分で実行する
2. キャリアパスの目的

近年では、キャリアパス制度を導入する企業が増えています。
企業は、何を目的としてキャリアパスを設定するのでしょうか。その目的は、大きく分けて2つあります。
2-1. 従業員のモチベーションを高める
1つめの目的は「従業員のモチベーションを高めるため」です。
企業がキャリアパスを構築しそれを従業員に説明することは、従業員にとっては成長へのモチベーションとなり、高い意欲を持って業務に携わることにつながります。
2-2. 優秀な人材を確保する
2つめの目的は「優秀な人材の確保」です。
キャリアパスによって、採用時の待遇・処遇だけでなく、「将来的にはこのように昇進できます」という将来的なビジョンを提示すれば、優秀な人材を確保しやすくなります。
さらに、人材の定着率が高まり勤続年数の長い従業員が増えていくため、企業全体の人材力を高めることが可能です。
以上をまとめると、企業は従業員のモチベーションを高めると同時に、優秀な人材を確保し定着させる目的で、キャリアパス制度を導入していることがわかります。
3. キャリアパスのメリット

キャリアパス制度は、企業側だけでなく従業員側にもメリットの多い制度といえます。具体的に3つのポイントを解説しましょう。
3-1. 人事評価の透明性が高まる
1つめのメリットは「人事評価の透明性が高まる」ことです。
どのような基準で人事評価が行われているのか、どんな条件を満たせば昇格できるのかが不透明な職場で働くのは、不安なものです。
例えば、評価者(上司など)の個人的な好みで自分の評価が左右されたり、同じ仕事をしているはずの同僚だけが昇格したりすれば、大きな不満を抱えることになります。
キャリアパスでは、あらかじめ、どんな条件を満たせば昇格できるのかが明確に提示されます。
いわゆる「人事の見える化」を実現できるのが、キャリアパス制度の利点です。
昇格や昇進の基準がオープンになっているため、評価の公平性や納得性が担保されます。
3-2. モチベーションが高まりやすい
2つめのメリットは「モチベーションが高まりやすい」ことです。
企業は従業員のモチベーション向上を目的としてキャリアパスを導入することは先に述べたとおりですが、これは働く側にとっても大きなメリットです。
私たちは、何らかのインセンティブ(報酬、ご褒美)がなければ、モチベーションを高めるのは難しくなります。
キャリアパスでは「いつまでに、どのような能力を形成し、どんな条件を満たせば昇進できるのか」が明確です。言い換えれば「がんばったら、どんなご褒美がもらえるのか」が明確であるともいえます。
日々を業務に高いモチベーションで取り組みたい人にとっては、キャリアパス制度は意欲を高めるうえで強力なサポートとなります。
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3-3. 個人のスキルアップにつながる
3つめのメリットは「個人のスキルアップにつながる」ことです。
キャリアパス制度のもとで、不足しているスキルを身に付けていくと、それは自分自身のスキルアップにもつながります。
キャリアパスがない企業では、何年働いても自分の業務内容が変わらずに、自分の成長につながらないケースがあります。
キャリアパスがあれば、スキルを身に付けると同時にステップアップし、さらに新たなスキルを習得できることは、大きなメリットです。
たとえ転職してその企業を離れるにしても、自分に高いスキルが身に付いていれば、より良い条件の企業から内定をもらうことができるでしょう。
4. キャリアパスのデメリット

一方、キャリアパスにはデメリットもあります。2つのポイントを見てみましょう。
4-1. キャリアパスが企業都合で変わる可能性がある
1つめのデメリットは「キャリアパスが企業都合で変わる可能性がある」ことです。
キャリアパスは「企業から提示された約束事」といえます。しかしながら、約束事が守られないケースもあることは、頭に入れておきましょう。
というのは、キャリアパスは、企業が今後も安定的に成長しないと実現できないからです。
例えば、不況による経営状況の悪化や事業変更による組織変更などがあれば、キャリアパスにも変化が生じます。
特に、まだ経営が安定していない新興企業や経営基盤が小さな企業が示すキャリアパスは、「あくまでも予定(変わる可能性も大いにある)」と捉えたほうが安心です。
キャリアパスは、企業の提示通りに実現されれば前述のメリットを享受できますが、そうでなかった場合には逆効果となるリスクを押さえておきましょう。
4-2. 上昇志向の少ない従業員は居心地が悪くなる
2つめのデメリットは「上昇志向の少ない従業員は居心地が悪くなる」ことです。
キャリアパス制度は、積極的に出世を目指したい上昇志向の強い人にとってはメリットが大きい反面、上昇志向が強くない人にとっては職場での居心地が悪くなる可能性があります。
働き方の多様化を受け入れて、それぞれの個人に合った無理のないキャリアパスを提示してくれる企業なら良いのですが、半ば強制的に出世コースのキャリアパスを提示する企業もあるのが現実です。
ワークライフバランスとの兼ね合いを重視して、あえて管理職などの昇格を目指さない選択をする人は、キャリアパスを強制されない企業を選ぶ必要があります。
5. 自分に合うキャリアパスの判断方法

企業が提示するキャリアパスが、自分に合っているかどうか判断するためには、どうすれば良いのでしょうか。
2つのポイントをご紹介します。
5-1. 自分のキャリアプランと照らし合わせる
1つめのポイントは「自分のキャリアプランと照らし合わせる」ことです。
キャリアプランとは、自分が将来目指したい理想像にたどり着くための計画のことです。
在職している企業内の出世ルートであるキャリアパスに対し、キャリアプランは転職や独立起業も含む個人的な計画を表します。
- キャリアパス:在職している企業内での出世ルート
- キャリアプラン:転職や独立起業も含む個人の計画
《企業が提示するキャリアパス》と《自分が描いているキャリアプラン》の方向性が一致するかどうかによって、キャリアパスが自分に合っているかどうか判断しましょう。
キャリアパスとキャリアプランに重なり合う部分が多ければ多いほど、そのキャリアパスはあなたに合っていると判断できます。
自分のキャリアプランを持っていない人は、この機会にキャリアプランを作っておきましょう。詳しくは以下の記事をご覧ください。
5-2. ロールモデルを確認する
2つめのポイントは「ロールモデルを確認する」ことです。
ロールモデルとは、目指したいと思える模範となる存在を指します。その人のスキルや行動を学んだり模倣したりするに値する人物のことをロールモデルと呼びます。
企業が提示しているキャリアパスに沿って先を歩んでいるロールモデルの姿を見ることで、より具体的にそのキャリアパスのイメージがつかめます。
具体的には、「自分がキャリアパスを進んでいったら、この人のようになる」と想像できる先輩社員や上司、管理職、役員は誰になるのか、企業側へ確認しましょう。
キャリアパスと社内に実在する人物と照らし合わせて考えれば、自分にその道筋が合っているのか判断しやすくなります。
なお、ロールモデルが社内に存在しない場合には、そもそもそのキャリアパスが実現し得るものなのかも含めて、慎重に検討すべきといえます。
6. キャリアパスに関する注意点

最後にキャリアパスに関する注意点を2つ、お伝えします。
6-1. 自分の希望を企業に明確に伝える
1つめの注意点は「自分の希望を企業に明確に伝える」です。
キャリアパスは、基本的に企業側が提示するものですが、企業から押しつけられるものではありません。
企業と従業員の意向に相違点があれば、お互いにすり合わせながら設定していくことが大切です。
もし自分の希望とは異なるキャリアパスを提示された場合には、そのまま承諾せずに、自分の希望を明確に伝えましょう。
そのうえで、お互いにとって最もメリットが大きくなる落としどころを探っていけば、キャリアパスで失敗しにくくなります。
6-2. キャリアパスによって可能性を閉ざさないようにする
2つめの注意点は「キャリアパスによって可能性を閉ざさないように注意する」です。
キャリアパスは、そのルートに乗って順調に出世できれば、最短距離で目標地点にたどり着ける一方、途中のルート変更が難しくなる面もあります。
そのキャリアパスのルートに乗ったことによって、ほかの道が閉ざされる可能性にも、留意することが大切です。
特に、以下のケースに当てはまる場合は、キャリアパスによって選択肢の幅を狭めないように注意しましょう。
今後キャリアチェンジする可能性がある
スペシャリストの道に進むか、ゼネラリストの道に進むか決まっていない
もしキャリアパスのレールを外れたとしても、再挑戦できる余地を残しておく意識を持って、キャリアパスを検討していきましょう。
7. まとめ
キャリアパスとは企業内における昇進の道筋のことで、企業側が従業員に提示する「人事制度」の意味合いが強いものです。
企業がキャリアパス制度を導入する目的としては2つ挙げられます。
- 従業員のモチベーションを高める
- 優秀な人材を確保する
キャリアパスのメリットは以下のとおりです。
- 人事評価の透明性が高まる
- モチベーションが高まりやすい
- 個人のスキルアップにつながる
キャリアパスのデメリットは以下のとおりです。
- キャリアパスが企業都合で変わる可能性がある
- 上昇志向の少ない従業員は居心地が悪くなる
自分に合うキャリアパスの判断方法としては以下の点に留意しましょう。
- 自分のキャリアプランと照らし合わせる
- ロールモデルを確認する
キャリアパスに関する注意点はこちらです。
- 自分の希望を企業に明確に伝える
- キャリアパスによって可能性を閉ざさないようにする
キャリアパスを自分の人生にうまく活用することで、モチベーション向上やスキルアップにつながります。ぜひ、主体的にキャリアパスに関わっていきましょう。
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