
「出世する人に共通する特徴はあるのかな」
「自分は出世できるタイプなのかな」
出世する人というのは、単に仕事ができる人というわけではありません。
むしろ、仕事「以外」のことができる人が出世するのです。
営業成績が常にトップだったり、ヒットする企画を生み出したりなど、特別な目立つ実績のある人は、優秀なプレイイングマネージャーとして、主任や班長クラスにはすぐになれるでしょう。
しかし特別な実績はないものの、仕事以外のことができる人の方が、係長、課長、部長と、長期的に見たときに早く出世していくことができます。
意外に思えるかもしれませんが、仕事そのものの出来不出来は人並みで構わないのです。
具体的に言えば、あなたが平社員で、現状で以下のような基本的な仕事ができていれば、仕事面での評価はクリアしていると考えていいでしょう。
・遅刻や無断欠勤をしない
・誤字や脱字、数字の入力ミスなどをしない
・納期を守る
・「報告」「連絡」「相談」をする
仕事面での目立つ評価よりもむしろ、組織の中で出世する人の多くは、周囲から人間力の面で高い評価を得ています。
人間力の面での評価とは、「コミュニケーション能力がある」ことと、周囲からの「信頼が厚い」こと。
とはいえ、明日から突然「コミュニケーション能力を高くしろ」「信頼をつかめ」などと言われても、実際のところ何をどうしたらいいのか、困ってしまいますよね。
そこでこの記事では、できるだけ早く、回り道せずに組織の中で出世したいあなたに向けて、周囲から人間力が高いと評価されるための具体的な行動を、明日からすぐにできる形でわかりやすく解説していきます。
<この記事を読めば分かること>
・出世する人の仕事の能力は「特になくても構わない」
・出世する人が持つ2つの大きな特徴
・出世する人の2つのタイプ
・出世する人の「コミュニケーション能力」の育て方
・「信頼」を得るための具体策
・出世したい人がやってはいけない、信頼を失うNG行動
・転職で出世したい人がやっておくべき3つのこと
記事の最後には、「出世する人」にまつわる素朴な疑問にQ&A形式で答えていますので、どうぞそちらも参考にしてください。
この記事を読めば、あなたのキャリアを向上させるための、具体的な方法が分かります!
目次
1.出世する人の仕事の能力は「特になくても構わない」

冒頭で、組織の中で出世する人の仕事の出来不出来は人並みで構わなく、むしろ人間力の面での評価が大事であるとお伝えしました。
仕事については、以下のような、新入社員時に教えられた基本的なことができていれば十分なのです。
・遅刻や無断欠勤をしない
・誤字や脱字、数字の入力ミスの確認をする
・納期を守る
・「報告」「連絡」「相談」をする
会社は仕事をする場所にも関わらず、出世に関係するのは「実際に仕事ができるかどうか」ではありません。むしろ、仕事以外の部分でどれだけ自分の人間力の高さかを示せるかが重要なのです。
実際のデータで、そのことを確認してみましょう。
以下は、転職支援のプロである転職コンサルタント119名に対して行ったアンケートの結果で、出世する人に共通する仕事の進め方・取り組み方についての回答です。(複数回答)
| 1 | 問題解決能力が高い | 51% |
| 2 | 高いパフォーマンスを出すことができる | 49% |
| 3 | 判断基準が明確である | 44% |
| 4 | 現場の仕事に関する高い専門スキルがある | 42% |
| 5 | 論理的な表現力がある | 41% |
| 6 | チームワークを大切にする | 36% |
| 7 | 部下の育成が上手い | 33% |
| 8 | 仕事を一人で囲い込まない | 30% |
| 9 | ビジョンを描くことができる | 30% |
| 10 | 数値管理が上手い | 30% |
| 11 | 中長期的な計画を立てることができる | 29% |
| 12 | 課題抽出力が高い | 28% |
| 13 | だれかの力を借りるのが上手い | 23% |
| 14 | 一つ上のポジションの視点を持っている | 23% |
| 15 | リスクを負うことができる | 19% |
| 16 | 上司のサポートが上手い | 17% |
| 17 | その他 | 2% |
注目したいのは、トップに来ている2つの項目に限って見ても、半数前後の人しか「そのスキルや能力がある」と答えていないということ。
・問題解決能力が高い…51%
・高いパフォーマンスを出すことができる…49%
それ以下の項目については、はっきりと「ある」ではない方が大きく上回っています。
つまり、仕事のスキルや能力については、トップに来ている2つの項目を含めても、「あるに越したことはないがなくても出世できる」ものなのです。
問題解決能力や高いパフォーマンスなどは、仕事をする上であった方がいいとだれもが思うものでしょう。
しかし現実として、組織の中で出世するかどうかを考える際には、絶対にこのスキルや能力がなくては出世できないというものは、ひとつもないのです。
出世する人は、仕事面で特に目立つスキルや能力がなくても出世すると言えます。
2.出世する人が持つ2つの大きな特徴

出世する人に仕事面でのスキルや特徴が特に求められないことがわかったところで、では、逆に何が必要なのでしょうか。
それは「コミュニケーション能力」と「信頼」です。
まずはひとつ目の、「コミュニケーション能力」が必要であるという事実から、データで確認しましょう。
2-1.出世する人が持っている「コミュニケーション能力」
こちらは、先ほどと同じ転職支援のプロである転職コンサルタントへのアンケートの結果で、出世する人に共通する人柄について回答を得たものです。(複数回答)
| 1 | 周囲を巻き込むコミュニケーション能力がある | 74% |
| 2 | ストレス耐性が高い | 54% |
| 3 | 謙虚さがある | 50% |
| 4 | 決断力がある | 44% |
| 5 | チャレンジ精神が旺盛 | 38% |
| 6 | 同僚・部下からの信頼が厚い | 35% |
| 7 | 周囲への気配りが上手い | 33% |
| 8 | 他人の責任にしない | 26% |
| 9 | 上司との付き合いが良い | 17% |
| 10 | だれに対しても公正である | 15% |
| 11 | 企業へのロイヤルティが高い | 15% |
| 12 | イノベーターシップが高い | 9% |
| 13 | その他 | 6% |
| 14 | 社内の派閥に属さない | 2% |
| 15 | マイペースである | 2% |
注目したいのは、トップにきている「周囲を巻き込むコミュニケーション能力がある」という設問への回答が74%にも上るということ。つまり、転職支援のプロから見て4人に3人が、出世する人に共通に見られる特徴であると回答しているのです。
2位以下が50%前後しかないことからも、「コミュニケーション能力」は出世する人に求められる人柄として最大の特徴と言えます。
実は、コミュニケーション能力が求められるのは、出世を意識してからのことではありません。冒頭で挙げた「基本的な仕事」と同じく、新入社員の頃から変わらず求められているものです。
経団連の調査では、新卒採用の際の選考で重視する点として、「コミュニケーション能力」が16年連続で1位を取り続けています。(5つ選択回答)
| 1 | コミュニケーション能力 | 82.4 |
| 2 | 主体性 | 64.3 |
| 3 | チャレンジ精神 | 48.9 |
| 4 | 協調性 | 47.0 |
| 5 | 誠実性 | 43.4 |
| 6 | ストレス耐性 | 35.2 |
| 7 | 論理性 | 23.6 |
| 8 | 責任感 | 22.1 |
| 9 | 課題解決能力 | 19.8 |
| 10 | リーダーシップ | 17.1 |
| 11 | 柔軟性 | 15.0 |
| 12 | 潜在的可能性(ポテンシャル) | 13.5 |
| 13 | 専門性 | 12.0 |
| 14 | 創造性 | 11.1 |
| 15 | 信頼性 | 10.9 |
| 16 | 一般常識 | 6.5 |
| 17 | 語学力 | 6.2 |
| 18 | 履修履歴・学業成績 | 4.4 |
| 19 | 留学経験 | 0.5 |
| 20 | その他 | 3.9 |
参考:日本経済団体連合会 2018年『新卒採用に関するアンケート調査結果』
実際のところ、企業における仕事は社内外の多くの人間と関係性を構築して進めていくものなので、人当たりの良い、いわゆるコミュニケーション能力が高い人ほど、相対的に見て実際に仕事ができる傾向があります。
そしてコミュニケーション能力の高い振る舞いは、以下のような現象を引き起こしやすくします。
・名前を覚えられる
・協力される
・支持される
・大目に見られる
そしてこれらの現象は、縦と横のふたつの方向からの良い影響を生み出します。
①上司・取引先からの引き立てがある
②同僚からの協力でパフォーマンスが高まる
つまり、職場においてコミュニケーション能力の高い振る舞いができる人は、上司・取引先からの指名や社内での協力者を得て、少しの失敗にも寛容な、挑戦しやすい仕事環境を自ら作り出しているのです。
また、会議にコミュニケーション能力の高い人物がひとりいるだけで、その場全体の雰囲気が良くなり、前向きな議論ができるようになった経験をしたことがあるという方も多いことでしょう。
出世する人に何よりも重要なのは「周囲を巻き込むコミュニケーション能力がある」こと。そして具体的に、その能力があるように振る舞うことなのです。
コミュニケーション能力を高めるための具体策は第4章で詳しく解説しますので、合わせてご覧ください。
2-2.出世する人が持っている「信頼」
仕事のスキルが高く、どんなに周囲から「仕事ができる人」と認められていても、「出世する人」になれない場合があります。
それは、周囲からの「信頼が薄い」状態です。
スキルと信頼の関係を一覧にしたものをご覧ください。
スキルが高く信頼も厚い人物の場合は、だれも文句をつけることなく案を採用したり、具体的な成功に向けて全体で協力したりするでしょう。
しかし、信頼が薄い人物の場合は、たとえスキルが高くても相手の反感を買ったり、優先度を下げられたり、まったく同じことを言う信頼の厚い人の手柄になることがあります。
少しでも早く、確実に出世したいと思うのであれば、周囲からの「信頼」を得ることが大切です。
周囲から信頼を得るための具体策は第5章で詳しく解説しますので、合わせてご覧ください。
3.出世する人の2つのタイプ
出世することができる人は、次の2つのタイプに限られています。
①スキルが高く信頼も厚い
②スキルは低いが信頼が厚い
それぞれ詳しく見ていきましょう。
3-1.スキルが高く信頼も厚い人
「スキルが高く信頼も厚い人」は、先ほどのマトリクスで右上に当てはまる、もっとも早く出世することのできる人です。
このタイプは上司からの引き立てに加えて、同僚や部下からのサポートを得やすいため、仕事でも高いパフォーマンスを出すことができます。
転勤や転職などをしても、実務スキルの高さは即日に伝わるものなので、周囲から一目置かれます。加えて信頼もすぐに得ることができるため、早い段階で結果を出すことができるでしょう。
もしも自分がこのタイプだと自覚するのであれば、転職でさらなる業界上位を目指したり、重役や社長まで見据えた出世の計画を立てることをお勧めします。
3-2.スキルは低いが信頼が厚い人
「スキルは低いが信頼が厚い」人も、実は出世することができる人です。
仕事上の実務スキルについては、足りなければ周囲が補うことができます。
挑戦を助けてあげたい、理解してあげたいと思う協力者が現れることで、企画が採用されたり新しい経験を積む機会が与えられます。
このタイプの場合、この人物を買っている上役が近くにいる限りは、出世の機会に恵まれるでしょう。
しかし、もし転勤や転職などで周囲の信頼をゼロから構築しなければいけない場合は、新たな協力者を得るまでに時間がかかるため、前職と同じような活躍の場を与えられる機会は減ります。
もしも自分がこのタイプだと自覚するのであれば、周囲からの信頼のあるいまのうちに、実務スキルを少しずつ上げる努力を重ねましょう。
出世する人のオーラの正体は「ハロー効果」
「出世する人にはオーラがある」などと言われることがあります。
実際にオーラを目にする場面はあまり多くないですが、「あの人は出世しそうだ」と感じたことがある人は、少なくないでしょう。
オーラの正体として考えられるのが、心理学で言うところの「ハロー効果」です。
ハロー効果とは、ある対象を評価する時に、それが持つ顕著な特徴に引きずられて他の特徴についての評価が歪められる現象のこと。
出典:wikipedia
学歴が高い人を前にすれば、「頭がいいんだな。きっと仕事もできるのだろう」と、実際の仕事を見たことがなくても考える人は多いでしょう。
そして学歴以外にも、堂々として自信に溢れた態度の人や、気配り上手で丁寧な物腰の人を見ると、「仕事ができそう」だとか「緻密な仕事をしそう」だと思い込むのです。
このハロー効果は、出世を良い方向に後押ししてくれることがあります。
「仕事ができそうな人」には、次々に責任のある案件や任務が与えられるのです。
万が一失敗しても、「あの人でもダメだったか」「いい経験を積んだな」と思われ、成功すれば「さすがだな」と、どう転んでもポジティブに仕事の結果が捉えられます。
そうしてさらに大きな仕事の経験が与えられ、場数をこなしてスキルも上がることで、実際に出世の階段をトントンと登っていく「出世する人」になるのです。
初対面を含めたできるだけ早い段階で、自信に満ちた立居振る舞いや気配りなどを通し「仕事ができそうだ」と相手に思わせることで、「出世する人のオーラ」を身につけることができるでしょう。
4.出世する人の「コミュニケーション能力」の育て方

「出世する人はコミュニケーション能力を持っている」と言われたところで、明日から職場で突然フレンドリーに振る舞うことは難しいですし、できたとしてもただ周囲を驚かせるだけでしょう。
では、どんなことをすれば周囲から「コミュニケーション能力が高い」と評価されるのでしょうか。
実は「コミュニケーション能力」と言われるものは、以下の3つの実務力に分類ができます。
・伝達力
・理解力
・非言語力
「コミュニケーション能力が高い」と言われる人は、この3つの実務力をそれぞれ高く持っている人と言えます。
幸いなことに、実務力は後天的に磨き高めることのできるものです。
「コミュニケーション能力が高い」と評価されるためには、実務レベルで自分の長けている力と足りない力を理解し、足りない力を意識的に高めることが重要です。
具体的には、足りない力の項目で紹介している特徴的行動を真似して取り入れるのです。
それぞれの力が平均的に高まることで、コミュニケーション能力全体が向上していくことでしょう。
次の項から、それぞれの力と特徴的行動について、詳しく見ていきましょう。
4-1.伝達力
伝言ゲームのように単純に用件をそのまま渡すことではなく、「相手に正確に伝わるように正しい手段で伝える」力を指します。
ビジネスシーンでは特に、伝えたい内容に応じて適切な方法を取るべき必要があることから、相手に正確に伝わったことで生じる効果までが求められます。
伝達力が高い人の特徴的行動
- 声量が大きすぎたり小さすぎたりしない
- 文字が小さすぎない
- 読みやすい丁寧な字を書く
- 誤字や脱字が少ない
- 専門用語や外来語を別の言葉に置き換える
- やってほしい内容や期限を具体的に伝えて指示する
- 相手によって確実に伝わる適切な手段を取る
- 伝えるタイミングを図る
- 読んで欲しいところに強調線などを引いて目立たせる
- 時間のない相手に手短に要件を伝える
伝達力の高い人は、周囲から「気遣いができる」「丁寧」「気が利く」「場をわきまえている」という人間力の面での評価を得ることが多いでしょう。
一方で、伝達力だけが高くて他の2つの力が低いと、「細かい」「くどい」などとネガティブな印象だけを残してしまいます。
4-2.理解力
読む・聞くなどした情報から「相手が伝えたいことや相手の意図を理解する」力を指します。
単に相手が発した情報、感情、意見、提案などを受け取るだけでなく、それらをより深い次元で理解するため、質問をすることもポイントとなります。
ビジネスシーンでは、自発的に質問をすることで、より正確で詳細な情報を受け取る姿勢も含まれます。
理解力が高い人の 特徴的行動
- メモを取る
- メモを読み返す
- 復唱する
- 質問する
- 自分の理解が正しいか相手に確認する
- 知らない言葉を調べる
- 資料の重要箇所に線を引く
- 相手の話を最後まで聞く
- 物事を細分化して見る
- 多読する
理解力が高い人は、周囲から「誠実」「謙虚」「素直」「勉強家」という、人間力の面での好印象を持って受け入れられることが多いでしょう。
一方で、理解力だけが高くて他の2つの力が低いと、「堅物」や「真面目すぎて面白みに欠ける」というマイナスイメージを与えてしまいます。
4-3.非言語力
言葉に頼ることなく、言外に表れる声のトーンや雰囲気、身だしなみ、顔色など、いわゆる「空気を読む」「空間を読む」などの力を指します。
ビジネスシーンでは、具体的な言葉としては表れてこない情報を単に「読む」だけでなく、その情報を用いて「伝える」場面も含め、先に挙げた2つの力と合わせて総合的に情報を伝えたり理解したりするものです。
非言語力が高い人の特徴的行動
- 図示する
- 色や形を効果的に使う
- ジェスチャー豊かに話す
- 強弱や緩急をつけて話す
- 変化に気が付く
- 整理整頓をする
非言語力が高い人は、周囲から「よく気が付く」「楽しい/楽しそう」「ムードメーカー」という、人間力の面での評価を受けていることが多いでしょう。
一方で、非言語力だけが高くて他の2つの力が低いと、「軽薄」「調子がいい」といった残念な評価を受けてしまいます。
5.信頼を得るための具体策

「信頼」は、だれでも最初から持っているものではありません。
仕事でもプライベートでも、日々の関係性の中で少しずつ勝ち得るものです。
実は、日本の組織や文化においては、「自分への配慮が感じられる行動かどうか」が、信頼感を形成するもっとも大きな要因であるという研究結果があります。(参考:「企業組織における信頼の意味を考える」)
つまり「自分はあなたに配慮している」ということを、言葉や行動で伝えることで、相手からの信頼を得ることができるのです。
信頼を得るために明日からすぐに行うことができる具体的な方法は、次の3つです。
・だれにでも自分から挨拶をする
・感謝を積極的に伝える
・清潔感ある身だしなみをする
それぞれ順に詳しく見ていきましょう。
5-1.だれにでも自分から挨拶する
挨拶をするというのは、相手のマズローの欲求階層論における第三階層と第四階層の欲求を満たす行為です。

たったひと言の挨拶で、相手がその場にいることを認め(=社会的欲求「集団に所属したい」)、その存在を肯定(=承認欲求「自分は認められている」)することができるのです。
自分の人間としての根本的な欲求を満たし、自分に対して配慮してくれる人物だということが伝わるため、挨拶をすることは相手の信頼を得る行為なのです。
また、後輩や部下などのいわゆる「目下」に対しても同様に自分から挨拶をすることで、「分け隔てのない人」「公平な人」であると評価され、信頼をさらに強めることができます。
5-2.感謝を逐一相手に伝える
感謝というのは、心の中で思えば済むものではありません。
形にする、言葉にすることで、相手は初めて自分が感謝されていることを知るのです。
資料作りのサポートをしてくれた後輩や事務スタッフに対して、得意先担当者の考え方の特徴を教えてくれた先輩や上司に対して、「相手も給料をもらってやっている業務内容だからしてもらって当然のこと」とは思わずに、逐一感謝の気持ちを伝えます。
以下のように、できればきちんと時間や労力、お金といった自分のリソースをかけて伝えることが大切です。
| 時間 | 労力 | お金 | |
| ひと言相手に感謝を伝える | 少 | ー | ー |
| 相手の席まで行って目を見て感謝を伝える | 少 | 少 | ー |
| 小菓子などを添えて感謝を伝える | 少 | 少 | 少 |
| お礼状を書く | 中 | 中 | 少 |
| 食事や酒の席に誘って感謝を伝える | 多 | 中 | 中 |
きちんとリソースをかけられた相手は、かけられたリソースの分だけ「わざわざ」「丁寧に」と、あなたに感謝されたことを強く印象に残します。そして小さくても回数を重ねることで「この人は、やってあげたことをきちんと返してくれる人だ」という信頼を育みます。
また、感謝することは同時に「報告・連絡」をすることになるので、ともに働く上司や仲間を安心させる効果もあります。
「この人と一緒に仕事をすると気分がいい」「また一緒に仕事がしたい」という正のスパイラルを生み出し、成果を出す機会が与えられるのです。
5-3.清潔感ある身だしなみをする
「清潔」とは、以下の状態を指します。
①汚れがないこと。衛生的であること。また、そのさま。「からだを清潔に保つ」「清潔な下着」⇔不潔。
②人柄や行いが清らかで、うそやごまかしなどがないこと。また、そのさま。「清潔な選挙」出典:weblio国語辞典
①の意味が指す物理的に清潔な状態というのは、本来であればだれもが生理的に気持ちの良い状態です。
爪が伸びて汚れている、肌が荒れている、ジャストサイズの服でないというのは、本人がまず気持ち悪さを感じるはずの状態です。その気持ち悪い状態を放置して平然としていられるということは、相手に「生理的な部分で共感しあえない人間だ」という印象を与え、本能から不安にさせます。
身だしなみを整えると、自分自身が本来的に気持ちの良い状態をキープすることができるだけでなく、相手と同じ最低限の生理的価値観を持っている人間であると、周囲に伝えることになります。
清潔感という共通の生理的価値観があることで相手は安心し、自分を不快にさせない、自分を人として尊重してくれる人間であると、自分への配慮を感じて信頼を置くのです。
また、清潔感があると同じ席に着いて話をしたり食事をしたりするハードルがなくなるため、より円滑なコミュニケーションの機会が増えるという効果もあります。
そして「清潔」という言葉は、同時に②の概念的な意味も持っています。
清潔感のある身だしなみをすることは、「うそやごまかしなどがない」人間であるということを言下に伝える重要な役割を果たします。
流行のファッションをまとう必要はありませんが、意識して清潔感のある身だしなみを保つことは、ビジネスシーンにおいて信頼を得るために欠かせない要素なのです。
【注意】「出世する人はいつも笑顔」には性差がある
よく「出世する人はいつも笑顔を絶やさない」などと言われることがありますが、これは欧米人における調査データを元にしたものが多いようです。
日本人だけを対象にした調査では、文化的に男性が笑顔を見せるケースが欧米人と比較して少ないため、男性の場合、笑顔よりも真顔の方が信頼を得やすいということが分かっています。
世代や個人にもよりますが、日本人男性の場合は、はっきりとした笑顔よりも「口角が下がっていない状態」を意識した方が、特に年配の相手からは信頼を得やすいと言えます。
一方、日本人女性の場合は、欧米のデータと同様に真顔よりも笑顔の方が信頼を得やすいという有意な結果が得られています。
文化的背景を無視して、男女の別なく一概に「出世する人はいつも笑顔」とは言い切れないため、こうしたデータの元には注意してください。
6.出世したい人がしてはいけない、信頼を失うNG行動

信頼を得るための方法をお伝えしましたが、一方で、信頼を失くしてしまうNG行動についてもお伝えしておきます。
周囲からの信頼が薄いと、どんなにスキルが高くても「あの人の話は聞きたくない」と思われてしまうため、出世したいと考えているのであれば、ここでご紹介する行動は絶対に慎んでください。
出世したいと思う人が絶対にやってはいけない、「出世できない人」特有の信頼を失くすNG行動は、以下の3つです。
・不平や悪口を言う
・責任転嫁する
・不潔にしている
それぞれ詳しく解説していきます。
6-1.不平や悪口を言う
自分以外のだれか・何かを貶めることで、自分の価値が相対的に高まると思うのは、本人だけです。
観客席からプレイヤーの個々のプレイについて文句を言う観客が、決してフィールドに立つことがあり得ないように、外野として安全な立場から文句や悪口だけを言っている人には、いつまでも責任ある仕事は回って来ないでしょう。
そもそも同じ職場で働く同僚である以上、「外野」という場所は本来存在しません。
アドバイスなりサポートなり、何か気づいたことがあった時点で積極的に関わろうとしない姿勢の人間は、会社全体の利益を考えた時に不要な存在です。自分だけ安全なところにいたまま無責任な言動をしていると受け取られ、信用されなくなります。
同様に、出世する同僚や後輩に対する良い評価を「おべっか使い」「アピールだけは上手い」などと否定的な批判に転換するのも、本人は自分を「俯瞰している」と思ってのことかもしれませんが、周囲からは「卑屈だ」「卑劣だ」と思われ、信頼を失います。
6-2.責任転嫁する
出世を減点法によるものだと考え、極力ミスをしないようにと日々予防線を張るのは、間違っています。
後輩や事務職員に作成依頼した資料があまり良いとは言えないものだった場合に、出世しない人は作成した相手を責め、相手のミスにします。
指示が明確でなかった、時間を充分に取っていなかった、途中確認しなかったなど、指示した自分の側に非のあることが想像できない人間に、マネジメントは任せられません。
また、そんな自分を棚にあげ、上司からの指示が悪かった、他部署の対応が遅かった、取引先がなっていないなど、自分の能力が発揮できないことを組織の体制のせいにするような人間は、そもそも組織に必要ありません。
何かと失敗の原因を他者に押し付ける態度は一緒に働く同僚に不安を与え、信頼を失くし、協力者を失うことになります。
6-3.不潔にしている
第4章でもお伝えしましたが、不潔な状態は相手を本能から不安にさせて距離を置かれます。
また、単に物理的な汚らしさから生理的嫌悪感を抱かせるだけでなく、その「人柄や行い」にも「うそやごまかしなど」がありそうだという疑いを持たせるものなのです。
服装や髪型、肌などの身だしなみだけでなく、デスク周りが不潔な状態であることも、「書類を失くしそう」「優先順位がつけられなさそう」といった不信感を抱かせることに繋がります。
自分の日常的な視野範囲さえ行き届いていない人間であると判断され、組織全体、社会全体に関わるような規模の仕事を任せるような信頼を得ることはできません。
7.転職で出世したい人がやるべき3つのこと

ここまで、主に自社内で出世するために、コミュニケーション能力が高いと評価されるための方法と、信頼を得るための具体策をお伝えしてきました。
しかし、自社内でポストが空いていない場合など、スキルを上げても信頼を得ても、出世できない状況も実際にはあります。
昇進基準が他社よりも高年齢である場合も、早くの出世はなかなか望めません。
そのような場合は、ほかの組織での出世を目指し、転職を視野に入れましょう。
ここでは、転職で出世を成功させるために、転職前の今からやっておくべきことをご紹介します。
具体的な内容は以下の3つです。
・自分の仕事を言語化する
・「仕事以外」の世界を持つ
・強みに特化しない
それぞれ詳しく見ていきましょう。
7-1.自分の仕事を言語化する
あなたが日々取り組んでいる仕事は、組織の中におけるどの部分で、何を目的としていて、最終的にどのような製品やサービスにどんな形で結びついているのかを、自分の言葉で語れるようにします。
組織での仕事は、分業です。日々行っている仕事はタスクであり、そのタスクと組織が解決すべき課題やミッションとの関係を、いま一度きちんと捉えるのです。
これは、頭の中で漠然と分かっているような状態では足りません。
1分間のスピーチで相手が理解できるまで、言葉と文脈を整理して、自分の仕事を明文化することを目指しましょう。
自分の立ち位置を正しく捉え、全体との協働を見つめることのできる姿勢は、転職先で管理職候補として迎えられます。
7-2.「仕事以外」の世界を持つ
趣味を持つ、異業種交流をする、サークル活動に参加するなど、できるだけ社外の多世代の人間と交流する機会を作ります。
会社内の人間関係しか知らないと、勤務先の価値規範しか持たないため、一般常識とズレたり、自分の職業能力を過大視してしまうことがあるからです。
転職先で前の職場の価値規範を持ち出しても、まず通用しませんし、井の中の蛙だと知ることもあるかもしれません。
変化していく社会の中で自社がどのような立ち位置であるべきか、その中で自分がどのような立場にあるか、常に全体を見て俯瞰する視点は必要です。
人間としての幅があり、多世代の意見に柔軟に耳を傾けて協調できるしなやかな姿勢は、どんな転職先でも歓迎される資質です。
7-3.強みに特化しない
転職というと、自己PRとして強みや得意分野を語る機会が目立ちますが、転職前のいまの段階は、弱みをなくしていく方向の努力が必要です。
当たり前のことですが、いまあなたに協力してくれている同僚のスキルとあなたへの信頼は、転職先に持ってはいけません。
転職先では、自分のやったことのない業務が実は大前提として求められることもあるでしょう。
転職前のいまのうちに、同僚や後輩が担当していることで、自分がやったことのない業務や案件を探し、積極的に手を挙げてください。
なお、ここでの失敗は、たとえ社内に残ることになったとしても、出世の足を引っ張るものにはなりません。むしろ課題への積極的な取り組みであると、好意的に受け取られるでしょう。
昇進年齢の目安
全国の上場企業を中心とする4,003社に対するアンケートの回答から、各ポジション相当への昇進年齢の実態が分かっています。
自社の制度上の昇進年齢と空きポストや過去の実績を確認し、自社内での出世の可能性を知る参考にしてください。
区分 制度上の昇進年齢 実在者の年齢 最短 標準 最年少 平均 係長 29.5歳 32.7歳 31.4歳 39.6歳 課長 33.9歳 39.4歳 35.9歳 45.1歳 部長 40.1歳 47.0歳 43.6歳 50.7歳
8.出世にまつわるQ&A

出世に対するよくある素朴な疑問にお答えします。
Q.仕事ができない人が出世するのはなぜか
企業勤めはスポーツ選手や職人とは異なるため、仕事は冒頭で紹介したように、常識的なことができれば、それ以上特に求められることはありません。仕事そのものの実績よりも、コミュニケーション能力があり、周囲からの信頼を得ているなど、仕事以外のことができることこそが、出世にとっては重要な要素なのです。
また、第3章で解説したように、仕事が特にできるわけではなくても、周囲からの信頼があると上司からの引き立てや同僚からの協力を得られるため、自分一人では出せないような高いパフォーマンスの成果を出せる場合もあります。
Q.自社の昇進年齢が標準より高いのだがどうしたらいいか
実際に席が空いていないのであれば、社内での出世は時間がかかるでしょう。どうしてもいまの会社で出世したいということでなければ、転職も視野に入れて出世のための活動をしましょう。
Q.女性が出世するにはどうしたらいいか
まずは出世したいという意思を伝えることが大切です。一般的には30歳前後で係長昇進の機会があるので、そのタイミングで昇進の話があった時に乗れるかどうかを具体的に見据えておきます。
妊娠や出産をして家庭との両立を図る場合は、できない理由ではなくできる方法を具体的に用意しておきましょう。実際の産前産後の休暇はわずか98日間のみ。その間をブランクにしても、仕事そのものにはさほど影響はありません。むしろ復職後の子育てとの両立について、自分がどうしたいかを考えておきましょう。
Q.転勤を断ったら出世できないか
勤務先の就業規定にもよりますが、一般的には、入社時に転勤についても包括的合意がなされています。そのため、転勤を正当な理由なく断ることは、出世の話以前に解雇の対象になる場合があります。
プライベートな理由でどうしても現在の場所を離れたくないのであれば、転勤がないことを条件にした転職をした方が良いでしょう。
まとめ
今回は、「出世する人」について、必ず持っているべき要素や特徴をまとめました。
意外なことに、仕事の出来不出来は出世に関係ないということがわかりましたね。
出世する人に必要なのは、「コミュニケーション能力」と「信頼」です。
明日からすぐにコミュニケーション能力を高めたいあなたのために、コミュニケーション能力をわかりやすい3つの実務スキルに分けて解説しました。
・伝達力
・理解力
・非言語力
そして、どんなにスキルが高くても周囲からの信頼を得られないと、出世する人にはなれないこともお伝えしました。
実際に出世ができるのは、「スキルが高くて信頼の厚い人」と「スキルは低いが信頼の厚い人」だということも、お分かりいただけたことと思います。
周囲からの信頼を得るために、今日からできる具体策は3つ。
・だれにでも自分から挨拶する
・感謝を逐一相手に伝える
・清潔感ある身だしなみをする
ぜひさっそく実践してみてください。周囲のあなたを見る目が劇的に変わっていくのを感じるでしょう。
また、いまの会社ではどうしても出世することができないという方のために、転職で出世を目指すためにやるべきことをご紹介しました。
・自分の仕事を言語化する
・「仕事以外」の世界を持つ
・強みに特化しない
同じ職場で働く年数が長くなるほど、自分の立ち位置や周囲、社会と自社との関係が見えにくくなっていくものです。
特に転職を考えていないという方も、ぜひ一度参考にしてみてください。
この記事が、あなたのキャリアアップのお役に立ちますように。




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