
キャリアビジョンとは、仕事をしていくうえでの自分の将来の理想像のことです。
キャリア(職歴、経歴)を積みながら、“最終的にどんな自分になりたいか”を思い描いたビジョンのことを、キャリアビジョンと呼びます。
キャリアビジョンを持つことは、日々の仕事へやりがいをもたらすと同時に、自分が思うような人生を実現するために重要な意味を持ちます。
にもかかわらず、キャリアビジョンを持っている人は少数派です。キャリアビジョンを持たない大多数の人は、会社の都合に振り回されたり、主体的にキャリアを選択できずに失敗したりして、苦しい思いをしています。
そこでこの記事では、理想の仕事人生を実現させるためには欠かせないキャリアビジョンについて、詳しく解説します。
この記事のポイント
- キャリアビジョンの基礎知識が理解できる
- キャリアビジョンを描く手順がわかる
- 面接での答え方や注意点まで解説。
この解説を最後までお読みいただければ、あなたは「キャリアビジョンの基本」はもちろん、自分の人生にキャリアビジョンをどう活かせばよいのか、理解できるようになります。
キャリアビジョンをうまく使えば、自分が願う人生を歩みやすくなるはずです。ではさっそく、キャリアビジョンの解説を始めましょう。
目次
1. キャリアビジョンとは

まずはキャリアビジョンの基礎知識から見ていきましょう。
1-1. キャリアビジョンとは自分の将来の理想像のこと
キャリアビジョンとは、仕事をしていくうえでの自分の将来の理想像のことです。
キャリア(職歴、経歴)を積み上げながら、“最終的にどんな自分になりたいか”という理想の姿のことをキャリアビジョンと呼びます。
ビジネスにおいて「ビジョンは大切」という話を聞いたことがあるかもしれません。
ビジョンという言葉には「将来の構想・展望」といった意味がありますが、ビジョンが大切なのは、個々人のキャリアについても同じことです。
自分の仕事人生において将来を見通した目指す姿(=キャリアビジョン)を掲げることで、いま何をすべきかがわかり、幸せな人生に向かって自信を持って歩むことができます。
1-2. キャリアパス・キャリアプラン・キャリアデザインとの違い
キャリアビジョンには、ほかにも似た言葉があります。ここで意味の違いを整理しておきましょう。
▼ キャリア関連の類義語
| キャリアビジョン | 仕事をしていくうえでの将来の理想像 |
| キャリアプラン | 仕事をしていくうえで将来の理想像を実現するための行動計画 |
| キャリアデザイン | 自分のキャリアの積み方を設計・構想すること |
| キャリアパス | 企業内における昇進の道筋・ルート(企業が従業員に提示することが多い) |
キャリアプランは、キャリアビジョンを実現するための行動計画を指す言葉です。
キャリアデザインは、キャリアの積み方を設計・構想することを指します。
キャリアパスは、企業内における出世コースのことです。
キャリアプラン・キャリアデザイン・キャリアパスのどれを考えるうえでも、大本となるのはキャリアビジョンといえます。
キャリアビジョン(自分はどうありたいか)がまず前提としてあって、それを実現するための計画や構想を考えていく──という段取りです。
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2. キャリアビジョンを描く目的

キャリアビジョンを描く目的とは、何でしょうか。
一言でいえば、「自分が主導権を握って、主体的に人生を歩むため」といえます。
キャリアビジョンとは、自分自身で決める仕事上の未来像です。
もしあなたがキャリアビジョンを持っていなければ、勤務先の会社の都合や家族の要望、社会情勢など、外部環境に翻弄されながら、行き当たりばったりで仕事人生を歩むことになるでしょう。
例えば上司から、「来期から、●●の部署に移ってくれないか」と打診があったとき、あなたは、その場の雰囲気に飲まれた返答をしてしまいます。
なぜなら、目指すべき目的地が定まっておらず、何を基準に承諾したり断ったりすれば良いのか、“自分のものさし”を持っていないからです。
キャリアビジョンがあれば違います。
キャリアビジョンによってあなたの仕事人生に、明確な目的地が描かれますから、いつでも主体的に、自分が主導権を握って人生を選ぶことができるようになるのです。
自分がこうありたいと思う理想に向かって、自ら人生を操縦できる状態を作ることこそ、キャリアビジョンを描く目的といえます。
3. キャリアビジョンを描くメリット

キャリアビジョンを描くとどのようなメリットがあるのでしょうか。3つのポイントをご紹介しましょう。
3-1. あらゆる選択肢に対して意志を持って判断ができる
1つめのメリットは「あらゆる選択肢に対して意志を持って判断ができる」ことです。
私たちの人生は、選択の連続です。どちらを選ぶべきか、迷うことも多いでしょう。
キャリアビジョンがあれば、あらゆる意思決定が容易になります。「キャリアビジョンを実現するための近道はどれか」という指標(自分のものさし)をもとに、意志決定しやすくなるためです。
身近なたとえ話をするなら、レストランに行って、膨大なメニューのなかから一品を選ぶ必要があるとしましょう。
優柔不断な人なら、アレでもない・コレでもないと迷ってしまうシーンですね。雰囲気に流されてほかの人と同じ料理を注文してしまう人もいるでしょう。
しかしビジョンがあると、違います。例えば「ぜい肉のない筋肉質な体型を目指す」というビジョンがある人なら、脂質が少なくタンパク質がたっぷり含まれた「蒸し鶏のさっぱりソース」に即決するでしょう。
同じように、キャリアビジョンを持てば、仕事人生における大きな判断から小さな判断まで、意志を持って決定できるようになるのです。
3-2. 周囲の協力を得やすくなる
2つめのメリットは「周囲の協力を得やすくなる」ことです。
明確なキャリアビジョンを持っていて、それを周囲にも話している人のもとには、そのキャリアビジョンを実現するために役立つ情報や出会いが、自動的に集められます。
なぜなら、キャリアビジョンとは、「私は仕事を通して、このようになりたいと思っています」という宣言でもあるからです。
この宣言がなければ、周囲の人は協力したくても何もできません。どうすれば力になれるのか、さっぱりわからないためです。
しかし、キャリアビジョンという宣言をしていれば、周囲の人はあなたのキャリアビジョンに役立ちそうな情報を見つけるたびに、「あっ、教えてあげよう」とあなたを思って連絡してくれます。
こうして、あなた自身は何もしなくても、おのずと良い情報や出会いがあなたのもとに集まってくるというわけです。
これが5年、10年、20年……と蓄積すれば、非常に膨大な量になります。キャリアビジョンを持っている人と持っていない人では、大きな差がつくことになるのです。
3-3. 仕事へのモチベーションが高まる
3つめのメリットは「仕事へのモチベーションが高まる」ことです。
「こうなりたい」という、あるべき未来像に向かって仕事をすることは、大きなやりがいを与えてくれます。
やりがいを感じていれば、毎日、重い体を引きずるようにして嫌々会社にいくような日々とはおさらばです。
高いモチベーションを維持して、いま目の前にある仕事を楽しめるようになります。目の前の仕事が、キャリアビジョンにつながっていることを実感できるためです。
逆に、キャリアビジョンにつながっていない仕事なら、その仕事を手放す判断ができるでしょう。
結果として、やりがいのある仕事だけが目の前に残り、高いモチベーションをキープできることは、キャリアビジョンの大きなメリットです。
4. キャリアビジョンを描く手順 3ステップ

キャリアビジョンは、どのように描いたら良いのでしょうか。具体的な方法を解説します。
- ステップ1:自己分析する
- ステップ2:過去から現在までの職務経歴を分析する
- ステップ3:自分が心から達成したいと願う理想像を描く
4-1. ステップ1:自己分析する
1つめのステップは「自己分析する」です。
キャリアビジョンは自分が目指したいと思う理想の姿ですが、何が理想なのか深く思考するうえで欠かせないのが自分を十分に知ることです。
自己分析にはさまざまな方法がありますが、まずは次の3つの問いを自分自身にしてみてください。
- なにが自分にできるのか、得意なことはなにか
- なにをやりたいのか、だれに喜ばれたいか、どのような人といっしょに仕事がしたいか
- なぜ、そういう仕事がしたいのか、なにをめざしているのか、自分の夢とはなになのか
「会社と個人を元気にするキャリア・カウンセリング」より
出典:東京大学
上記の質問にすぐに答えが出ない場合には、次のことを参考にしてながら答えを探っていきます。
- 友人や両親などに、自分のいいところを聞いてみましょう(自分ではあたり前と思っていたことが、人からは立派な長所とみられている場合があります)
- 過去にどんなとき楽しかったか思い出して書いてみましょう
- 人より「これはちょっと得意」というところがあったら書いてみましょう(もちろん大学で勉強してきたことでもかまいません)
「これだけはゆずれない」という自分にとって大切にしていることがあったら書いてみましょう出典:東京大学
これらの質問を通して自分の能力・興味・価値観などを明らかにしていきましょう。
具体的に抽出したいポイントは、以下のとおりです。
- 価値観、興味、関心事項(大事にしたい価値観、興味・関心を持っていることなど)
- 強み・弱み(自分の強みや、弱みを克服するために努力していることなど)
- 将来取り組みたい仕事や働き方など
例えば、以下のようなイメージで、明確化していきましょう。

出典:厚生労働省
4-2. ステップ2:過去から現在までの職務経歴を分析する
2つめのステップは「過去から現在までの職務経歴を分析する」です。以下をすべて棚卸しして、書き出してみましょう。
▼ 整理するポイント
- 過去から現在に至るまでの職務経歴
- 現在までの業務で得た経験、スキル、知識
- 雇用形態
- 役職、役割
- 収入
- ワークライフバランス
- どんな仕事が好きか/嫌いか
- どんな仕事が得意か/不得意か
- 現在の仕事の満足な点/不満な点
これらの項目を分析しながら、自分が今後できること・したいことを具体化していきます。
ステップ1で書き出した「将来取り組みたい仕事や働き方」に加筆修正を加え、より明確化していきます。
4-3. ステップ3:自分が心から達成したいと願う理想像を描く
3つめのステップは「自分が心から達成したいと願う理想像を描く」です。
ポイントは“自分が心から達成したいと願う”という点です。
たとえば「こうなったら、周囲から認められるのではないか」「親が、こうなって欲しいと言っている」といった他者目線での理想像を描いてしまうと、「3. キャリアビジョンを描くメリット」でご紹介したようなメリットを享受できません。
ステップ1・ステップ2での自己分析と職務経歴分析の結果を踏まえて、あなたにとっての理想像を描くことが大切です。
うまく描けないと感じるときには、まだ自分を十分に理解できていないといえます。焦らずに、じっくり自己分析をして、自分を見つめる作業を行っていきましょう。
5. 面接でキャリアビジョンを質問されたときの答え方

キャリアビジョンは、企業の採用面接でよく質問される項目のひとつです。
ここでは、転職活動中の面接で面接官からキャリアビジョンを質問された際に、どう答えるべきなのかを見ていきましょう。
ポイントは2つあります。
5-1. ポイント1:企業のビジョンとの方向性を合わせる
1つめのポイントは「企業のビジョンとの方向性を合わせる」です。
求人企業は、自社のビジョンと方向性が合致する人材を採用したいと考えています。
そこで、コーポレートサイトや決算説明資料に記載されている企業のビジョンや求人票の記載内容を事前によく確認しておきましょう。
そのうえで、企業のビジョンと自分のキャリアビジョンの方向性を合わせ、「企業の成長とともに自分も成長していきたい」という意欲を伝えてください。
例えば、海外進出を考えていて、そのための人材補強を考えている企業であれば、将来的にはグローバルに活躍したいと考えていることを伝えると良いでしょう。
企業の目指すベクトルとあなたの目指すベクトルが合致していることが伝われば、高評価につながります。
5-2. ポイント2:キャリアプランも説明する
2つめのポイントは「キャリアプランも説明する」です。
キャリアビジョンは目指す理想の姿ですが、面接においては、その理想の姿を実現するための計画(キャリアプラン)も一緒に話せるようにしましょう。
ただ夢を描いているだけでなく、実際に計画を立てて行動していることを示すことができれば、好印象を与えることができます。
キャリアプランの作り方については以下の記事で解説しています。あわせてご覧ください。
6. キャリアビジョンの注意点

最後に、キャリアビジョンに関する注意点を2つ、お伝えします。
6-1. 非現実的なキャリアビジョンは意味を成さない
1つめの注意点は「非現実的なキャリアビジョンは意味を成さない」です。
キャリアビジョンは、必ず達成しなければならないという類いのものではありませんが、しかし実現可能である必要はあります。
なぜなら、どんなにがんばったとしても、そもそも実現し得ないキャリアビジョンでは、キャリアビジョンが形骸化してしまい、役に立たないからです。
自分が持っている能力や特性を鑑みたうえで、努力すれば実現できる理想像をキャリアビジョンとして掲げるのがポイントといえます。
実現可能なキャリアビジョンだからこそ、モチベーションを高めたり意思決定が明確になったりといった効果が生まれ、幸せな人生を歩むために役立つのです。
6-2. 転職活動におけるキャリアビジョンはプロの助けを得る
2つめの注意点は「転職活動におけるキャリアビジョンはプロのアドバイスを得る」です。
正直なところをいえば、こんな方も多いのではないでしょうか。
- 転職活動で表向きのキャリアビジョンが必要になったので、慌てて作っている
- 転職活動の面接対策として、有利になるキャリアビジョンを作りたい
転職活動に伴いキャリアビジョンを描こうとしている場合、自分ひとりでは失敗しやすくなります。
なぜなら、転職活動のタイムリミットのなかでは、じっくりキャリアビジョンを構築する時間がないからです。
その場しのぎのキャリアビジョンでは、面接で評価を落とし転職活動に失敗する結果となりかねません。
対策としては、転職エージェントサービスを利用して、キャリアアドバイザーのアドバイスを得ながらキャリアビジョンを描くようにしましょう。
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7. まとめ
キャリアビジョンとは、仕事をしていくうえでの自分の将来の理想像のことです。
キャリアビジョンを描く目的は、「自分が主導権を握って、主体的に人生を歩むため」といえます。
キャリアビジョンを描くメリットとして以下が挙げられます。
- あらゆる選択肢に対して意志を持って判断ができる
- 周囲の協力を得やすくなる
- 仕事へのモチベーションが高まる
キャリアビジョンを描く手順 3ステップはこちらです。
ステップ2:過去から現在までの職務経歴を分析する
ステップ3:自分が心から達成したいと願う理想像を描く
面接でキャリアビジョンを質問されたときは、以下の2つのポイントに留意してください。
- 企業のビジョンとの方向性を合わせる
- キャリアプランも説明する
キャリアビジョンの注意点としては、以下が挙げられます。
- 非現実的なキャリアビジョンは意味を成さない
- 転職活動におけるキャリアビジョンはプロの助けを得る
キャリアビジョンを持つことは、私たちの仕事人生にやりがいを与えてくれます。ぜひ、キャリアビジョンを描いて、充実した毎日を送っていきましょう。




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