スタートアップとは|ベンチャーとの違いや向いている人まで総解説

スタートアップとは、「全く新しいアイデアによってまだ世の中に存在しないビジネスを生み出し、その提供によって人々の役に立つことを目指す取り組み」です。

また、スタートアップには以下の4つの特徴があります。

  • 新たな価値を生み出して社会に変革をもたらす「イノベーション
  • 短期間で大きな利益を狙う「急成長
  • 問題解決によって世の中の役に立つ「社会貢献
  • 収益化までの期間限定的な組織となる「出口戦略

スタートアップと混同されやすい言葉に「ベンチャー」がありますが、スタートアップはベンチャーよりも遥かに新しいビジネスを展開し、精鋭部隊によって急激なスピードで成果を上げることを目指すという点で違いがあります。

スタートアップは新たな価値を創造して社会に変革をもたらすものであり、スタートアップ企業で働くと画期的なアイデアによって世の中を大きく変えるというやりがいを得られます。その一方で、必ずしも成果を上げられるとは限らない不安定な状況の中で働くことによる大変さもあるのです。

このようなスタートアップの本質や注意点について、特にスタートアップ企業への入職を考えている人はしっかりと理解しておくことが大切です。なぜなら、よくわからないままに入職することで、自分には合わない働き方だったと後悔しかねないためです。

そこでこの記事では、以下について詳しく解説します。その際には難しいビジネス用語を使わずに説明するため、ビジネス初心者の方も簡単に理解することができます。

▼スタートアップとは
▼スタートアップ企業とベンチャー企業の違い
▼国内外のスタートアップ成功事例
▼スタートアップ企業で働くメリット・デメリット
▼スタートアップ企業で働くのに向いている人

この記事を読むことで、スタートアップとは何かということが正しく理解できます。また、スタートアップ企業への入職を考えている人は、スタートアップが自分に向いているのかどうかということを判断できるようになります。

「スタートアップって何なの?」という疑問をスッキリと解決し、キャリアプランに適した働き方を掴むための第一歩として、ぜひ最後までお読みください。

目次

1. スタートアップとは

冒頭でもご紹介したように、スタートアップとは「全く新しいアイデアによってまだ世の中に存在しないビジネスを生み出し、その提供によって人々の役に立つことを目指す取り組み」です。

そして、その取り組みを精鋭部隊によって急ピッチで行い、短期間で大きな利益を上げることを目指します。

この章では、スタートアップという言葉の意味や特徴について確認していきましょう。

1-1. 革新的なアイデアやビジネスモデルで新たな市場を開拓する概念

スタートアップとは「startup:行動を開始する」という英単語をカタカナで表したビジネス用語で、スタートアップの聖地といわれるアメリカのシリコンバレーから日本に入ってきた概念です。

日本のビジネスシーンにおいて、スタートアップは「起業」や「新規事業の立ち上げ」という意味で使われるケースが多いですが、単に新しくビジネスを始めるというだけでは本来の意味を成しません。

スタートアップとは、「まだ世の中に存在しない全く新しいビジネス」を始めることです。そのためには、革新的なアイデアをビジネス化し、市場をゼロから開拓することになります。

つまり、新しくビジネスを始めることに加えて、そのビジネス自体が前例のない新しいものであるということが、スタートアップと呼ばれる要件になります。

そして、スタートアップを事業の中心に据える企業のことをスタートアップ企業といいます。

スタートアップ企業では、即戦力となる人材を集めて精鋭部隊を編成し、ビジネスモデルの確立を目指します。その際には当該ビジネスにおいて第一人者の地位を維持し、早く結果を出すことで投資を引き込むために、猛スピードで目標に向かいます

スタートアップ企業では、ビジネスモデルを確立するまでの間はほとんど利益を得られないことも珍しくありません。そのため、投資家や他の企業からの投資・金融機関からの融資によって資金調達しながら経営していくケースが多くなります。

スタートアップを創業後まもない若い企業と捉えるのは誤り!

スタートアップとは企業そのものを表す概念ではなく、企業が行うビジネスの形に対する呼称です。

そのため、老舗の企業であっても、前述した「まだ世の中に存在しない全く新しいビジネス」を始めるのであれば、その事業はスタートアップに該当します。

1-2. 特徴は「イノベーション」「社会貢献」「急成長」「出口戦略」

スタートアップは、全く新しいビジネスを行うことに加えて、以下の4つの特徴をもちます。

  • イノベーション
  • 社会貢献
  • 急成長
  • 出口戦略

それぞれの特徴について、解説していきましょう。

1-2-1. イノベーション

イノベーションとは、それまでのモノや仕組みなどに全く新しいアイデアを取り入れて、社会的に意義のある新たな価値を生み出すことをいいます。

スタートアップには、このイノベーションが求められます。つまり、ビジネスが全く新しいというだけではなく、それが人々の生活をよい方向に変化させるものでなければならないのです。

例えば、洗濯洗剤の計量や詰め替えを不要にした「ジェルボール型洗剤」、傘のシェアリングサービス「アイカサ」などが、それまでの常識を変えることで新しい暮らしやすさを提供しています。

1-2-2. 社会貢献

スタートアップで人々の生活をよい方向に変化させるためには、「世の中の課題や問題を解決したい」という視点からアイデアを発する必要があります。

例えば、「ネットショップを運営したが手続きや管理が難しすぎる」を解決した「ネットショップ運営アシストサービスBASE」、「名刺が溢れて管理しきれない」を解決した「クラウド名刺管理サービスSansan」などのように、世の中の潜在的なニーズをいち早く察知し、それに応えるビジネスを生み出すことで社会貢献するための方法として、スタートアップが選ばれています。

1-2-3. 急成長

スタートアップの大きな特徴として、短期間に猛烈な勢いでビジネスを成長させるということがあります。この成長とは、アイデアをビジネス化し、ビジネスモデルを確立して収益を得るということです。

スタートアップの成長スピードがどのくらい速いのかをお伝えするために、新規株式公開(IPO)のお話をしましょう。

新規株式公開(IPO)とは

株式市場に上がって(上場)、それまでは未公開だった自社株式の売買ができるようになることです。よく耳にする「上場企業になりました」とは、この新規株式公開を行ったということを意味しています。

新規株式公開をするためには様々な基準をクリアする必要があり、企業創立から新規株式公開までの平均期間は2020年時点で約17年です。(参考:日本経済新聞

スタートアップのゴールについては後述しますが、この新規株式公開または事業売却によって収益を得ることを目指します。そして、数年でこの目標を達成するのです。「平均17年かかることを数年で」これがスタートアップの成長スピードです。

例えば、フリマアプリ「メルカリ」を運営する株式会社メルカリは創業後5年、 クラウド会計ソフト「freee(フリー)」を展開するfreee株式会社は創業後7年で、上場を果たしています。

1-2-4. 出口戦略

出口戦略とは、収益を最大限にして撤退するためにはどのような経営をするかというビジネスプランです。

一般の企業では、なるべく長期間安定的な経営を続けることを目指しますが、スタートアップでは出口戦略を前提に、短期間で新しいビジネスモデルを確立して一攫千金を狙います。つまり、スタートアップを行う組織は撤退前提の一時的な編成で、長期安定的な経営視点をもたないというケースが多いのです。

スタートアップがビジネスから撤退するのは、ゴールを達成したとき、あるいはそれが叶わず活動をやめるときになります。スタートアップのゴールであり最終的な利益を得るための方法は、主に以下の2つです。

  • 自社株式を公開して買ってもらう(新規株式公開)
  • 開発したビジネスを他の企業に売る(事業売却)

このゴールを達成した後、開発したビジネスを継続して供給する企業になる・売却先の企業に雇用される・当該ビジネスから撤退するなどの終わりを迎えるのです。

例えば、Google・Facebook・Amazonといった大企業は、元々はスタートアップでした。ビジネスモデルを確立した後に新規株式公開によって大きな利益を得、それを資本としてビジネスを拡張して提供し続けています。

また、料理レシピ動画クラシルを運営する「dely(デリー)株式会社」がYahoo!に、暮らしの情報サイトnanapiを運営する「nanapi(ナナピ)株式会社」がKDDIになど、他の企業に買収されて子会社になることで、買収元の資源を活用しながらビジネスを継続するというスタイルもあります。

2. スタートアップ企業とベンチャー企業の違い

スタートアップの意味と特徴がわかったところで、混同されやすい言葉であるベンチャーとの違いを確認しておきましょう。

ベンチャー企業とは、新しい技術やアイデアを使ってビジネスを展開する企業のことです。中小規模であることが多く、創業後間もない新しい企業という意味で使われることもあります。

一方のスタートアップ企業とは、前章で解説した4つの特徴を備えている企業であり、特に「ただ新しいのではなく未だかつてないビジネス」「短期間で大きな収益を狙う」「即戦力だけで構成された組織」という点で、ベンチャー企業とは異なります

スタートアップ企業とベンチャー企業の違い
スタートアップベンチャー企業
ビジネスモデル圧倒的に新しい(ゼロからつくる)新しい(既存のものを活用)
収益モデル短期間で大きな利益中長期的に安定した利益
求められる人材即戦力のみ幅広い

2-1. 圧倒的な先駆者であるかどうか

スタートアップ企業もベンチャー企業も新しいビジネスを展開しますが、新しさのレベルに違いがあります。

ベンチャー企業では、既に同じビジネスが存在しているがまだ十分に世の中に広まっていない・競合が少ないということが新しさであるのに対して、スタートアップ企業では同じビジネスがまだこの世に存在しないという圧倒的な新しさを追求します。

つまり、既存のビジネスモデルを活用するか、先駆者としてゼロからビジネスモデルをつくっていくか、という点で異なるのです。

2-2. 急スピード特攻によるゴール達成を目指すかどうか

スタートアップ企業とベンチャー企業では目指すゴール」と「ゴールまでのスピード感」に違いがあります。

ベンチャー企業のゴールは、目標とする収益を上げることに加えて、安定的な経営を続けることです。そのため、組織のまとまりを築きながら長期的に活動することでゴールを目指します。

一方のスタートアップ企業では、一点集中短期決戦で収益を上げることをゴールにしています。そして、他の追随を許さず確実な投資を受けるためには、できる限り速いスピードでそれを達成する必要があるのです。

つまり、長期安定的な収益を求めるか、とにかく短期間での大きな収益を求めるか、という点で異なるのです。

2-3. 即戦力へのニーズが高いかどうか

スタートアップ企業とベンチャー企業では、求められる人材にも違いがあります。

ベンチャー企業は、中長期的な視点で組織を成長させることを目指すため、即戦力にはならなくても将来性のある新卒や総合的なスキルをもつゼネラリストも採用します。

しかしスタートアップ企業では、即戦力になるスペシャリストしか採用しないケースがほとんどです。これは、可能な限り短期間でビジネスモデルを確立するという状況の中で、即戦力にならない人材を育成している余裕はないためです。

つまり、比較的幅広い人材を求めるか、即戦力になる人材のみを求めるか、という点で異なるのです。

スペシャリスト・ゼネラリストについて詳しく知りたい方は、「スペシャリストとゼネラリストの違い|どっちに適性があるかわかる」をご覧ください。

そこじゃない!スタートアップとベンチャーの違い

スタートアップとベンチャーは、混同されがちだということに加えて、それぞれの定義が不明確なまま使用されているという現状があります。そのために誤解されることもありますが、以下のような要件はスタートアップとベンチャーの違いには相当しません。

  • 創業してからの年数
  • 企業の規模
  • 組織の人数

スタートアップとベンチャーの違いは、あくまでも「ビジネスのやり方」にあるためです。

3. スタートアップ企業としての成功例

スタートアップとは何かがみえてきたところで、より具体的にイメージするために成功例をみてみましょう。

国内外の事例をいくつかご紹介します。

3-1. 国内スタートアップ企業

日本は海外に比較してスタートアップ企業の創立が少ないとされていますが、知らない人がいないというレベルの大成功を収めている企業もあります。

3-1-1. 株式会社メルカリ

フリマアプリ「メルカリ」を運営する企業です。創業者は山田進太郎氏、既存のフリマアプリやオークションとは異なる「スマホで完結」「出品者が値段を決められる」という特徴がヒットし、IT業界のスペシャリストを経営陣に置くという強みもあって、日本のフリマアプリでダウンロード数1位を誇ります。

株式会社メルカリは2013年の創業後、「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」という理念を掲げ、三井物産や日本政策投資銀行などの大企業から投資を受けながらどんどん業績を上げていきます。2017年には世界累計ダウンロード数が1億を突破し、ユニコーン企業(企業価値が10億ドルを超える非上場企業)として注目されていました。

その後2018年には上場を果たし、その株価は公開価格3000円を大きく上回る5000円で初値をつけ、時価総額は約6760億円でその年最大の新規株式公開となりました。

現在は社長の山田進太郎氏が約23%の自社株式を所有する筆頭株主であり、新規事業を担当する子会社を設立するなどして更なる事業拡大を進めています。

出口戦略新規株式公開(IPO)
時価総額(初値)約6760億円

3-1-2. 株式会社ビズリーチ

転職サイト「ビズリーチ」をはじめ、人事業務の効率化を目指すための様々な事業を手掛ける企業です。創業者は南壮一郎氏、ビズリーチは「会員制ハイクラス」「求職者課金型」という点で他の転職サイトとは異なり、新規性がありました。

2009年の創業後、「インターネットの力で、世の中の選択肢と可能性を広げていく」という理念を掲げ、採用プラットフォームに加えて人材活用クラウド、事業売却プラットフォームなど事業領域を広げていきました。

その後2020年にはグループ経営体制をとるための基幹となる会社“ビジョナル”を新設し、ビズリーチはビショナルに株式を全て譲渡することで完全子会社となりました。今後は、ビジネスの生産性向上を実現するさまざまな事業を創出することを目指すと発表しています。

出口戦略事業売却(M&A)
譲渡企業ビズリーチ
譲受企業ビショナル
譲渡価格非公表

3-1-3. ラクスル株式会社

インターネットによる印刷のシェアリングプラットフォーム「ラクスル」などを運営する企業です。創業者は松本恭攝氏、印刷機を所有している企業の非稼働時間に他の企業の印刷を行うシェアリングエコノミーの手法により低廉な価格を実現した点で、圧倒的な新規性を実現しました。

2009年の創業後、「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」という理念を掲げ、複数の資金調達を実施しながらサービスを拡張、広告プラットフォームや物流マッチングサービスも開始しました。

その後2018年には上場を果たし、公開価格1500円に対して1645円で初値をつけ、時価総額は約452億円となりました。

現在は社長の松本恭攝氏が約17%の自社株式を所有する筆頭株主であり、ITによる産業構造の変革を進めるための取り組みを継続しています。

出口戦略新規株式公開(IPO)
時価総額(初値)約452億円

3-2. 海外のスタートアップ企業

海外では、日本よりも遥かに多くのスタートアップが生まれています。大企業がスタートアップに期待して支援し、事業を買い取ることで自社に新技術を取り込むというスタイルをとるのが一般的です。

3-2-1. GitHub(ギットハブ)

ギットハブは、ソースコード(コンピュータプログラムを言語化したテキスト)の共有プラットフォームを運営するアメリカの企業です。創業者はクリス・ワンストラス氏らで、世界中のプログラマーが書いたソースコードを閲覧・利用できるという特徴から、ソフトウェア開発者向けサービスとしては必要不可欠といわれるほどになりました。

2008年の創業後、2018年にはマイクロソフト(アメリカ)に75億ドル(約8234億円)で買収され、子会社化しています。この買収により、マイクロソフトはオープンソース(ソースコードをフリー閲覧にしてソフトウエアの質を向上させようという動き)戦略を推し進めることを目指します。

出口戦略新規株式公開(IPO)
譲渡企業ギットハブ
譲受企業マイクロソフト
譲渡価格約8234億円

3-2-2. Ring(リング)

リングは、ホームセキュリティー機器の開発を手がけるアメリカの企業です。創業者はジェイミー・シミノフ氏、出先からWi-Fi経由で訪問者の顔を確認できるスマートドアホンをアメリカ全土に普及させました。

2012年に前述のスマートドアホンを開発後、2018年にはAmazon(アメリカ)に11億ドル(約1170億円)で買収され、子会社化しています。この買収により、Amazonは自社のセキュリティサービス「Amazon Key」をさらに強化させていく意向です。

出口戦略事業売却(M&A)
譲渡企業リング
譲受企業Amazon
譲渡価格約1170億円

3-2-3. Flipkart(フリップカート)

フリップカートは、インドの通販市場最大手の電子商取引企業です。創業者はサチン・バンサル氏とビニー・バンサル氏、インド国内の800以上の都市に配送網をもち、インドの通販の基幹となっています。

2007年の創業後、2018年にウォルマート(アメリカを本拠地とする世界最大のスーパーマーケットチェーン)に160億ドル(約1兆7000億円)で買収され、子会社化しています。この買収により、ウォルマートはそれまで苦戦していたインドでの市場獲得を躍進させることを目指します。

出口戦略事業売却(M&A)
譲渡企業フリップカート
譲受企業ウォルマート
譲渡価格約1兆7000億円

ここでは大企業をご紹介していますが、学生が個人でアプリを開発したという事例もあり、スタートアップの規模は様々です。

さて、ここまでスタートアップとは何かについて解説してきましたが、スタートアップに取り組んでみたいという方に向けて、次章からは「スタートアップ企業で働くこと」について考えていきましょう。

4. スタートアップ企業で働くメリット

スタートアップ企業では、ゼロからビジネスをつくり上げるために社員が一丸となって働きます。組織の人数は少ないことが多く、各自のスキルとスピード感が重視されます。

そのようなスタートアップ企業で働くことには、以下のようなメリットがあります。それぞれの内容について解説していきましょう。

4-1. 自分のアイデアが世の中の役に立つ

スタートアップが成功すると、世の中の人々の生活の質が上がります。自分たちの働きによって、誰かの困りごとが解決したり、より便利な暮らしを提供することができるのです。

最初はビジネスとして成り立つかどうかもわからなかったアイデアが、人々に認知され、幅広く活用されるようになって、時には喜びや感謝の声も届いてくるようになれば、何ものにも代えがたいやりがいを感じることができるでしょう。

4-2. 担当範囲が広く自分の裁量が大きいので主体的に働くことができる

スタートアップ企業は必要最小限の人数で構成されていることが多いため、限られた人員であらゆる業務に対応する必要があります。そのため、専門的なスキルを発揮する業務のみならず、総務・経理・営業などの様々な業務をマルチにこなすことが求められます。

また、即戦力として採用されることが多いスタートアップ企業では、一社員の裁量が大きくなる傾向にあります。

マルチタスクをこなし、自らの裁量という責任の下で働くことによって、主体的に行動できる力が伸びていきます。

4-3. 社長や上司との距離が近く、発言力をもてる

スタートアップ企業は少人数編成であるという特徴上、社長や上司と日常的にやりとりする機会が多くなります。

普段からよくコミュニケーションをとっていることによってフラットな関係性が築かれ、目上のポジションに対しても意見を述べやすく、業務に関する提案を受け入れてもらえるケースもあります。

自分は間違いなく企業の一員であり、しかも自分の意見で会社が動くこともあると感じられることで、モチベーションが上がるでしょう。

4-4. 向上心をもって働ける

スタートアップでは、常に新しい知識や技術をインプットすることが求められます。また、組織のメンバーはそれぞれに高い能力をもっており、競争意識を煽られたり、目標にしたいモデルケースを身近に感じられることもあります。

そして、即戦力として採用されるスタートアップでは、教育されるのではなく自ら学んで成長していくことが求められます。このような環境の中で、自然と向上心が高まり、意欲的に働くことができるはずです。

4-5. ストック・オプションがある

ストック・オプションとは、あらかじめ決められた価格で自社株を買う権利のことをいいます。

例えば「今後5年間、自社株を1株1000円で買う権利を与えます」という場合、株価が2000円になった時点で10株を購入・売却すれば、1万円の支出で2万円を手に入れることができるわけです。

スタートアップ企業では、社員にこのストック・オプションを与えるケースがあります。将来的に自社の株価が大きく上昇すれば、多額の利益を得ることも夢ではありません。

4-6. 起業するための練習になる

スタートアップはゴール達成後に解散する組織という前提にあるため、長期的に勤める企業にはならないというケースが多くなります。そのため、スタートアップ企業でスキルアップして起業を目指すという人も少なくありません。

起業を目指す人にとっては、幹部との距離が近く経営というものを間近でみられるというスタートアップの環境は、絶好の学習機会になります。

また、少人数構成であることによるマルチタスクも、様々な経験値を積み重ねることにつながり、起業の役に立つでしょう。

5. スタートアップ企業で働くデメリット

スタートアップ企業で働くことには多くのメリットがある反面、当然ながらデメリットもあります。

スタートアップで働くことのデメリットには以下のようなものがあり、スタートアップが未知のビジネスを扱うという難しさに起因しています。それぞれの内容について解説していきましょう。

5-1. 必ずしも成果を上げられるとは限らない

スタートアップは、全く前例のないビジネスを行うという点で、賭けのようなものです。素晴らしいアイデアだと思って始めたとしても、それで収益を上げられるようになるかどうかはわかりません。既存のビジネスモデルがない以上、結果を予測することが難しいのです。

実際に、成功できるスタートアップはほんの一握りだといわれています。そのため、苦労して働いてもそれに見合う報酬が得られるとは限らないというリスクがあります。

5-2. 労働環境が過酷になる可能性がある

スタートアップでは、少ない人数で短期間のうちに成果を上げることが求められます。そのため、一人が請け負う業務の量と種類が多くなりがちです。

その結果、業務中は息つく暇もないほど忙しい・残業が深夜に及ぶ・休日がほとんどない、といった過酷な労働環境になる可能性があります。

5-3. 給与や福利厚生がよくない

スタートアップ企業では、ビジネスが軌道に乗るまでの間は全く利益が得られないというケースもあります。そのため、経営のために必要な費用は投資に頼ってなんとか捻出するものの、社員の給与は十分に支払えないということもあり得るのです。

また、スタートアップ企業ではビジネスモデルの確立に全戦力を投じるがために、社内の設備や制度が整っていないことも多々あります。したがって、福利厚生が存在しないというケースも珍しくありません。

5-4. 評価制度や教育制度がない

スタートアップ企業は、ビジネスモデルの確立と収益化というゴールを達成したら解散することも多い期間限定的な組織であり、とにかく即戦力になる人材しか採用しないことから、人材育成という観点をもたないケースが少なくありません。

そのため、評価制度や教育制度がないことが多く、サポートを期待するのではなく自ら力で成長し、目に見える結果を出してくことが求められます。

5-5. 安定性がなく、社会的信用がない

スタートアップ企業では、ビジネスが軌道に乗るまでは十分な収益を得ることができず、かといって成功できるとは限らないという非常に不安定な状況の中で働くことになります。そして、最悪の場合には事業が破たんして職を失うという可能性も低くはありません。

また、その不安定さはストレスになり得るというだけでなく、社会的な信用を得られないことにもつながります。実績や知名度が低いスタートアップ企業に勤務するということは、勤務先の企業名を出しただけでローン審査に通る大企業とは真逆の扱いをされかねないということなのです。

5-6. 転職が難しい

スタートアップ企業ではマーケットそのものが未熟なケースが多く、前例が少ないので、自身のスキルが評価されないケースがあるというデメリットもあります。

スタートアップ企業が扱うのはこれまでに存在しなかったビジネスモデルであるため、そこでの経験はまだ社会的に認知されていず、転職先の企業において役立つのかどうかわからないと判断されてしまう場合があるからです。

そのため、転職する際には一般的なビジネスでも活用できるスキルを持っているということをアピールする必要があります。

6. スタートアップ企業で働くのに向いている人

スタートアップ企業で働くことのメリット・デメリットを確認したところで、その働き方が自分に向いているのかどうかということを考えてみましょう。

スタートアップ企業で働くのに向いている人とは、成功するかどうかわからないという不安定な状況に

力強く立ち向かえる以下のようなタイプです。それぞれの内容について解説していきましょう。

6-1. 前例のないことに取り組むのが好きな人

スタートアップでは前例のないビジネスに取り組むため、「参考にできるモデル」や「マニュアル」がありません。何もかもゼロから考えてつくり上げていくことになります。

この「とにかく自分が初めて」という状況を辛いと思わず、むしろその可能性の大きさにワクワクできる人は、スタートアップによって大きなやりがいを感じられるはずです。

6-2. 肉体的にも精神的にもタフな人

スタートアップ企業での仕事はハードワークになることが多く、ワークライフバランスは望めないと覚悟する必要があります。また、成果が上げられるかわからないという不安・繰り返されるトライアルアンドエラーなどとも付き合っていかなくてはなりません。

そのため、肉体的にも精神的にもタフであることが求められます。体力に自信がありストレスコントロールが得意な人は、スタートアップの辛さをあまり感じずに働くことができるはずです。

6-3. 課題発見力と実行力が高い人

スタートアップでは、ビジネスの素となる社会の課題をいち早く発見することが求められます。また、うまくいかないようであれば速やかに軌道修正しなくてはならないため、プロセスの中に隠れている問題を事前に察知する力も必要になります。

そして、スピード感が重視されるスタートアップの中では、課題を発見次第「とにかくまずやってみる」というアクションをとれることが大切になってきます。

物事の本質を捉えて課題を発見するのが得意で何事もすぐさま行動に移せる人は、スタートアップ企業でとても頼りにされるはずです。

6-4. 将来的に起業を考えている人

将来的に起業を考えている人にとって、スタートアップ企業はそのノウハウを学ぶ絶好の環境になります。

スタートアップ企業は少人数の組織であるケースが多いため、幹部と直接やりとりすることで考え方を学んだり、他社との交渉や経理の状況など大企業では縁遠くなりがちな業務を間近でみることができます。

また、様々な役割を請け負うことで、企業の中で必要な業務全般を経験することが可能になります。

その結果、自分が起業するときには「企業のあり方」について一通りのことがわかっている、という状態になれるでしょう。

6-5. 自ら学び続けられる人

スタートアップを成功させるためには、時代の流れを敏感に察知し、常に新しい知識や技術をインプットしていく必要があります。そして、スタートアップ企業では教育体制が整っていないことが多く、自分の力で学ぶことが求められます。

誰の助けがなくとも主体的に学ぶことができ、学ぶこと自体を楽しんで継続できる人は、スタートアップを単なる仕事ではなくライフワークとして捉え、意欲的に取り組めるはずです。

7. 経済成長に欠かせないスタートアップ、挑戦する人材が求められています

スタートアップにはリスクが伴い、挑戦するにはハードルが高いと感じる人も少なくないかもしれません。しかし、経済成長のためにはイノベーションを生み出すことが重要な課題であり、そのためにはスタートアップの活性化が求められます。

そのため、スタートアップ後進国といわれる日本においても、近年では公的な支援サービスが拡充されたり、スタートアップ企業に投資する大企業が増えてきています。

なによりスタートアップは、「人々の役に立つ」「世界を変える可能性がある」素晴らしい活動です。スタートアップに取り組んでみたいという気持ちがあるのであれば、ぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。

スタートアップ企業に関しての情報収集や人脈形成をしたい場合には、国土交通省や地方自治体・支援団体によって開催される交流会を利用するとよいでしょう。また、転職サイトをチェックすることで、スタートアップ企業の仕事内容や待遇を知ることができます。

以下に、おすすめの転職サイトをご紹介しておきます。

7-1.Amateras

 

Amaterasは、「日本から Google・Facebookを100社創出する」というスローガンを掲げ、独自の審査プロセスを通過した成長ポテンシャルの高いスタートアップ企業のみを掲載しています。

また、スタートアップ企業へ転職した人へのインタビュー記事など、有益な情報が得られます。

スタートアップ企業への転職を本格的に視野に入れようと考えている方には、転職エージェントを利用することをおすすめします。転職エージェントではアドバイザーが求人探しや企業との交渉などをサポートしてくれるため、自分に合った転職先をみつけやすくなります。

以下に、おすすめの転職エージェントをご紹介しておきます。

7-2.ProCommit

ProCommitは、スタートアップ・ベンチャー企業に特化した転職エージェントです。スタートアップ企業とのネットワークが強く、未公開の優良求人を数多く抱えています。

また、スタートアップ企業への転職に役立つコラムなど、様々な情報を得ることができます。

7-3.doda

dodaは、スタートアップ企業専門ではないものの、転職者満足度No.1を誇る転職エージェントです。求人数・バリエーションともに豊富に揃えているため、スタートアップ企業案件も多くみつかります。

また、30年間の転職支援実績があるため、ノウハウを熟知したアドバイザーにサポートしてもらえます。

8. まとめ

この記事では、以下について詳しく解説しました。

スタートアップとは

  • 「全く新しいアイデアによってまだ世の中に存在しないビジネスを生み出し、その提供によって人々の役に立つことを目指す取り組み」のこと
  • 新たな価値を生み出して社会に変革をもたらす「イノベーション」、短期間で大きな利益を狙う「急成長」、問題解決によって世の中の役に立つ「社会貢献」、収益化までの期間限定的な組織となる「出口戦略」という4つの特徴をもつ

スタートアップ企業とベンチャー企業の違い

  • スタートアップ企業のビジネスはベンチャー企業よりも圧倒的に新しい
  • ベンチャー企業が中長期的に安定した経営を目指すのに対して、スタートアップ企業は超短期決戦で一攫千金を狙う
  • ベンチャー企業が幅広い人材を採用するのに対して、スタートアップ企業は即戦力しか採用しない

スタートアップ企業としての成功例

【国内】

  • 株式会社メルカリ
  • 株式会社ビズリーチ
  • ラクスル株式会社

【海外】

  • GitHub(ギットハブ):ソースコードの共有プラットフォームを運営するアメリカの企業
  • Ring(リング):ホームセキュリティー機器の開発を手がけるアメリカの企業
  • Flipkart(フリップカート):インドの通販市場最大手の電子商取引企業

スタートアップ企業で働くメリット

  • 自分のアイデアが世の中の役に立つという大きなやりがいを得られる
  • 担当範囲が広く自分の裁量が大きいので、主体的に働くことができる
  • 社長や上司との距離が近く、発言力をもてる
  • 新しい知識や技術を自ら学ぶという環境の中で、向上心をもって働ける
  • 自社株をお得に購入できるストック・オプションがある
  • 経営というものを間近でみられることから、起業するための練習になる

スタートアップ企業で働くデメリット

  • 必ずしも成果を上げられるとは限らないという不安定な状況の中で働くことになる
  • 担当する業務の量や種類が多く、労働環境が過酷になる可能性がある
  • 収益が安定せず制度が整っていないため、給料や福利厚生がよくない
  • 人材育成という観点がないため、評価制度や教育制度がない
  • 安定的な雇用は確約されず、実績や知名度が低いため社会的信用がない
  • まだ社会に認知されていないビジネス経験であることによって、転職が難しい

スタートアップ企業で働くのに向いている人

  • 前例のないことに取り組むのが好きな人
  • 肉体的にも精神的にもタフな人
  • 課題発見力と実行力が高い人
  • 将来的に起業を考えている人
  • 自ら学び続けられる人

スタートアップにはリスクもありますが、経済成長のためには欠かせない活動であり、国内でも支援の動きが高まっています。

なにより、スタートアップは「人々の役に立つ」「世界を変える可能性がある」素晴らしい活動であるため、この記事を読んで自分に向いているかもしれないと考えた方は、ぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。

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キャリアアップとは?

よりよいキャリアアップを目指して先々の計画を立てることをキャリアデザインと言います。
どのようなキャリアを積み、自分の人生に役立てていくかを、常日頃からイメージしておくとよいでしょう。
もちろん、無理してキャリアアップなどせずに平坦に暮らしていたいというのも、ひとつの考え方です。

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